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第五 千づかの稲(5-55~58) [第五 千づかのいね]

    末白の一周忌に
5-55 ひとめぐり廻りて居るたかへ哉
5-56 月の晝うき寐の鳥をかぞへみむ
    年尾
5-57 としの夜や庭火に白き犬の兒(顔)
5-58 植木屋が歳暮の梅のにほひ哉


   末白の一周忌に
5-55 ひとめぐり廻りて居(いて)るたかへ哉
5-56 月の晝うき寐の鳥をかぞへみむ

 「ひとめぐり廻(めぐ)りて居(いて)るたかへ哉」の「たかへ」が季語と思われるが、この「たかへ」を、「たかべ」(三夏)と解すると、「ズキ目タカベ科の硬骨魚。地方によってシャカ、ベント、ホタとも。体長二十五センチに達する。背面は青緑色で幅広い黄色縦帯が特徴。夏場、焼魚にして美味。」(「きごさい歳時記」)の、魚の句となる。

 しかし、これは、次句の「月の晝うき寐の鳥をかぞへみむ」の「うき寐の鳥(浮寐鳥)」(三冬)と解すると、「毎年越冬のため、毎年日本に渡ってきて川や湖沼で一冬を過ごす水鳥の群れ。鴨・雁・鳰・鴛鴦・白鳥などが、水面に浮かんで眠るさまをいう。おおかたは羽根に首を突っ込みまるまった姿で浮いている。」(「きごさい歳時記」)の、鳥の句ということになる。

 ここは、この「たかへ」を「水鳥」(三冬)の一種と解して置きたい。

「水鳥」(《子季語》水禽/≪解説≫水上に暮らす鳥の総称である。この、水鳥がもっとも多く観察できるのが冬である。鴨、雁、白鳥、都鳥、鳰(かいつぶり)、鴛鴦(おしどり)など、家鴨(あひる)も含まれる。)(「きごさい歳時記」)

(例句)

水鳥や堤灯遠き西の京      蕪村「新五子稿」
水鳥を吹きあつめたり山おろし  蕪村「新五子稿」
水鳥や百姓ながら弓矢取     蕪村「新五子稿」
水鳥やさすがに雨をうちそむき  暁台「暁台句集」
水鳥のどちらへも行ず暮にけり  一茶「享和句帖」

(画像) → https://yahantei.blogspot.com/2023/06/5-5558.html

「雪松群禽図屏風(せっしょうぐんきんずびょうぶ)」/尾形光琳 /江戸時代/18世紀初頭/紙本金地着色/2曲1隻/156.0×171.6cm/岡田美術館蔵
https://www.okada-museum.com/collection/japanese_painting/japanese_painting23.html

≪ 金箔の地に青い水面が切り込む背景が用意され、その前面に、鴨や雁などの水鳥が13羽、空を飛び、あるいは地上で休んでいます。降り止んだばかりなのか、松の木や草の葉に雪が白く積もっており、金色に輝く空や地面は、雪晴れのまばゆい光に映えていることを示しているのでしょう。 尾形光琳(1658〜1716)は、雁金屋(かりがねや)という京都の高級呉服店に生まれ育ち、工芸的なデザイン感覚を身につけて育ちました。署名には、歌枕の「蝉の小川」(瀬見の小川)に由来し、都の画家であることを雅に名乗った「蝉川(せみがわ)」が使われています。≫(「岡田美術館」)

「末白の一周忌に」の「末白」も不詳。

5-55 ひとめぐり廻りて居(いて)るたかへ哉

「句意」は、「親しい俳人・末白の一周忌、末白が愛しんだ水鳥が、この池を一巡りして、正面に居座りて、凝視している。」

5-56 月の晝うき寐の鳥をかぞへみむ

「句意」は、「折から、中天には月の昼が懸かり、末白の一周忌もさることながら、亡くなった人の数を、この池辺の浮寝鳥の水鳥を数えるように、指を折っている。」


   年尾
5-57 としの夜や庭火に白き犬の兒(顔)
5-58 植木屋が歳暮の梅のにほひ哉

 「前書」の「年尾(年の尾)」(年の終わり、十二月も押し詰まったころ)も季語(仲冬・暮)だが、「5-57 としの夜や庭火に白き犬の兒(顔)」の句の「季語」は「としの夜(年の夜)」(大晦日の夜。除夜ともいう。一年のけじめの日であり、その年の息災を感謝し、来る年の家内安全を願う夜である。)の大晦日(仲冬・暮)の句である。

 この「としの夜」の平仮名の表記は、「年の夜」と「都市(江戸)の夜」とを掛けての用例なのかも知れない。また、「犬の兒(顔)」の「兒(顔)は、「前書」の「年の尾」の「尾」との対応なのかも知れない。

(画像) → https://yahantei.blogspot.com/2023/06/5-5558.html

葛飾北斎も餅つきの風景をユーモラスに描いています。のびすぎぃ!!(『北斎漫画』十二巻より「餅は餅屋」)

https://edo-g.com/blog/2016/12/new_year_holiday_season.html/3

5-57 としの夜や庭火に白き犬の兒(顔)

「句意」は、「今日は大晦日、今年最後の夜、大掃除や餅つきなど、新年を迎えるための準備で忙殺されている。庭には焚火が焚かれ、所在投げ犬の顔を浮かび上がらせている」

5-58 植木屋が歳暮の梅のにほひ哉

(画像) → https://yahantei.blogspot.com/2023/06/5-5558.html

画像右下に見える紋付の荷物はどこかの大名のお歳暮でしょう(『東都歳事記』「歳暮交加図」)

https://edo-g.com/blog/2016/12/new_year_holiday_season.html/8

 この句の季語は、「歳暮」(仲冬・暮)で、「もともとは歳暮周りといって、お世話になった人にあいさつ回りをしたことに始まる。そのときの贈り物が、現在の歳暮につながるとされる。お世話になった人、会社の上司、習い事の師などに贈る。夏のお中元と同様、日本人の大切な習慣である。」(「きごさい歳時記」)

「句意」は、「植木屋が、歳暮周りの挨拶にやってきた。新年の飾りなどの仕事も一段落して、その合間の挨拶周りで、その半纏には、新年の如月の梅の香がしていてる。」

(参考) 「二十四節季」と「季節区分」(「四季」「五季」「六季」「十七季」「旧暦」「新暦」など)

https://kigosai.sub.jp/kigoken3.html

(画像) → https://yahantei.blogspot.com/2023/06/5-5558.html

四季=「春・夏・秋・冬」
五季=「春・夏・秋・冬・新年」
六季=「春・夏・秋・冬・暮・新年」
十七季=「(初春・仲春・晩春・三春)・(初夏・仲夏・晩夏・三夏)・(初秋・仲秋・晩秋・三秋)・(初冬・仲冬・晩冬・三冬)・(新年)」
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