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第三 みやこどり(その一) [第三みやこどり]

第三 みやこどり(その一)

八橋やながるゝとしの畳臺 (第三 みやこどり)

燕子花一.jpg

抱一画集『鶯邨画譜』所収「燕子花図」(「早稲田大学図書館」蔵)

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/chi04/chi04_00954/chi04_00954.html

 抱一の自撰句集『屠龍之技』には、「燕子花」の句は収載されていないようである。「八橋(やつはし)」の句は、冒頭の句が、その「第三 みやこどり」に収載されている。しかし、この「八橋」は、光琳や抱一が描く「八橋図屏風」などの、『伊勢物語』の、旧東海道池鯉鮒(ちりゅう)宿の「八橋」とは、関係のない一句のようである。

 この句の季語は「ながるゝ年」(年流る)の、押し詰まった年末の句のようである。 この句の主題は、その年末の「畳替え」の「畳台」なのである。その「畳台」が、「八橋」の、「池・小川などに、幅の狭い橋板を数枚、稲妻のような形につなぎかけた」のように見えるという、江戸座の俳諧師・抱一宗匠の見立ての一句ということになる。この句は、蕪村の、次の句に近い。

  行年や芥流る々さくら川    蕪村 「夜半亭」
  行年の脱けの衣や古暦    蕪村 「落日庵」

 ここでは、江戸座(其角・存義座)の俳諧宗匠・抱一の、その句よりも、江戸琳派の創始者・画人抱一の、その流れの「燕子花」図を主眼といたしたい。

  尾形光琳の、「燕子花図屏風」(国宝・根津美術館蔵)・「八橋図屏風」(メトロポリタン美術館蔵)・「八橋蒔絵螺鈿硯箱」(国宝・東京国立博物館蔵)・「伊勢物語八橋図」(東京国立博物館蔵・掛幅)・「燕子花図」(大阪市立博物館蔵・掛幅)そして、尾形乾山の「八ツ橋図」(国(文化庁)・重要文化財(美術品))などについては、次のアドレスで簡単な紹介をしている。

https://yahan.blog.so-net.ne.jp/2018-06-06

 また、酒井抱一の、「八橋図屏風」(出光美術館蔵)・「燕子花図屏風」(出光美術館蔵)、そして、『光琳百図』(尾形光琳画・酒井抱一編)所収「燕子花図屏風」などについて、下記のアドレスで紹介をしている。

https://yahan.blog.so-net.ne.jp/2018-07-27

 これらの、光琳・抱一の次代の江戸琳派の旗手・鈴木其一の「燕子花」図関連の大作ものは目にしない。しかし、其一には、「雑画巻」(出光美術館蔵)や『草花十二ヵ月画帖』(MOA美術館蔵)などで、その小品ものの「燕子花」図を目にすることが出来る。

燕子花二.jpg

鈴木其一筆『草花十二ヵ月画帖』(MOA美術館蔵)所収「五月」(紙本著色、十六・七×二一・二㎝)

 「月次の草花を十二枚に描き、画帖としたもの」の、「五月」の図柄である。この図柄は「藤と燕子花」であろう。其一は、この画帖とは別に、『月次花鳥画帖』(細見美術館蔵)という画帖もあり、その画帖には「燕子花」図はなく、「藤」図が「四月」に描かれている。
 其一には、これらの画帖の他に、「十二ヵ月花木短冊」(個人蔵)、「十二ヵ月花鳥図扇面」(ファインバーグ・コレクション)、「十二ヵ月図扇」(太田記念美術館蔵)など、「四季の花卉」などを「十二ヵ月に描き分ける」という趣向のものが多い。この趣向は、「師の抱一が確立したもので、人気が高く、かなりの需要があったようである」(『鈴木其一 江戸琳派の旗手 図録』所収「作品解説135 十二ヵ月花鳥図短冊」)。
 上記の『鶯邨画譜』所収「燕子花図」は、上記の其一の『草花十二ヵ月画帖』所収「五月」(「燕子花」図)のマニュアル(抱一筆)と解しても差し支えなかろう。
 そして、この「燕子花」図は、「抱一→其一→其明→其玉」と、脈々と受け継がれて行くのである。

燕子花三.jpg

中野其玉筆『其玉画譜』(小林文七編・ARC古典籍ポータルデータベース)所収「燕子花図」
www.dh-jac.net/db1/books/results-thum.php?f1=BM-JH398&f12=1&-sortField1=f8&-max=30&enter=portal
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